この記事では、物理基礎「熱力学の法則」の解説をしていきます。
この項のポイントは以下の3つです。
- 熱について
- 熱力学第一法則
- 熱力学第二法則
物理基礎で勉強する熱ですが、覚えること自体はとても少ない。
つまり、コツさえつかめば少ない労力で点が取れるという分野ってことです。
頑張って勉強していきましょう!
熱について
物理学でいう熱とは、一般的に言われる「熱」とどう違うのか?
言葉の意味をしっかり理解して問題を解く準備をしてください。
まずは、言葉の定義だけは覚えていきましょう。特に難しくないです。
- 熱:熱運動のこと。単なる名称なので単位はない
- 熱運動:原子分子の不規則に飛び回る運動のこと。単位なし。
- 温度(T):原子・分子の熱運動の激しさを表す量。温度が高いほど熱運動は激しい(単位:K, ケルビン(1K = -272.15℃))
- 熱量(Q):熱運動の運動エネルギーの和(単位:J)
熱運動が激しいと熱量をたくさん持っているので、温度が高くなるんです。

熱量は運動エネルギーなので、力学の運動エネルギーと同じく単位はジュールだね。
そして、下の2つは計算式で非常によく使うので覚えておいてください。
- 熱容量(C):その物体の温度を1Kあげるのに必要な熱量Q(単位:J/K)
- 比熱(c):物質1gあたりの熱容量(単位:J/(g・K))
熱容量は、「温まりにくさ」とも言い換えられます。
小さな鉄塊と大きな鉄塊、大きい方が温まりにくいので、熱容量も大きいです。
比熱は、「その物質固有の温まりにくさ」。
1gの鉄塊と1gの水、水の方が温まりにくいので、比熱も大きいです。

物質の大きさが変わると、熱容量も大きくなります。
しかし比熱は、1g単位と決められているので、物質の大きさは関係ありません!
次に、下の3つは熱量・熱容量・比熱の関係です。
2つ覚えておけばもう一つは計算できるので、実質覚えるのは2つの式だけです。
(Δ(デルタ)は「差異」という意味。ΔTは「温度変化」のことです。)
- 熱量と熱容量の関係はQ = CΔT
- 熱容量と比熱の関係はC = mc
- (熱量と比熱の関係はQ = mcΔT)
最後にもう一つだけ覚えておきましょう。
- 熱量保存の法則「高温の物体が失った熱量=低温の物体が得た熱量」
冷たい水の中に熱した鉄球を入れて水の温度上昇を求める問題は「鉄球が失った熱量=水が得た熱量」の式を立てれば、簡単に解けますね。
注意:100℃の鉄球を10℃の水に入れた時、温度は(100+10)/2 = 55℃にはなりません。この計算では、比熱が考慮されていないんです。熱量保存の法則を使って、熱量から温度を計算します。
熱力学第一法則
物理基礎・熱の分野の根幹をなす項目。めちゃくちゃ大事です。
熱力学第一法則を使いこなして、問題をバシバシ解いていきましょう!
熱力学第一法則は気体に適応することが多く、「ΔU = Q + W」です。
- ΔU:内部エネルギーの差異(単位:J)
- Q:気体に与えた熱量(単位:J)
- W:気体に加えた仕事(単位:J)
内部エネルギーは「原子や分子の分子間力によるエネルギーや回転・振動のエネルギーの総和」。
力学的エネルギーは物体をマクロに見たときのエネルギー、内部エネルギーは物体をミクロに見たときのエネルギーだと思ってください。
また、内部エネルギーは高さや速さなどのパラメータは関係ありません。
熱力学第一法則は「エネルギー保存の法則」のこと。
「ΔU = Q + W」を文章にすると「内部エネルギーの変化分は、外部から与えた熱量と仕事の和に等しい」。
つまり外部からエネルギーを与えれば与えるだけ内部エネルギーが大きくなるということですね。
注意:Wを「気体が外部にした仕事」として定義すると、「ΔU = Q + W」のWを-Wと考えて「Q = ΔU + W」と する場合もあります。
混乱しがちなので、Wの定義には注意してください。教科書や問題集によってバラバラです。
熱力学第二法則
熱力学第二法則も、物理基礎・熱の分野で超大事な項目。
ただ、非常にイメージしやすいことを言っているので、しっかり理解しましょう。
熱力学第二法則は「熱は高温の物体から低温の物体に移動し、その逆は自然に起こらない」です。
大げさですが、以下のような非常に簡単なことを言っています。
熱いコーヒーをデスクに置いておくと、「コーヒー→空気」への熱の移動はあるが、「空気→コーヒー」からの熱の移動はない。
空気が冷えて、コーヒーがもっと熱くなることはない。
当たり前ですね。

ジュースが熱を失って冷えて、氷が熱を受け取り溶けるのも、熱力学第二法則。
まとめ
熱について理解できましたか?
ポイントをまとめますね。
- 熱力学第一法則:ΔU = Q + W
- 熱力学第二法則:熱は高温の物体から低温の物体に移動し、その逆は自然に起こらない」
世間一般の熱と、物理学の熱はちょっと違います。
しっかり分けて考えて、使いこなせるようにしましょう!
さて、理解したら次の単元に進みましょう!
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