この記事では、物理「磁場」の解説をしていきます。
この項のポイントは以下の3つです。
- 磁場の基本:電場と非常に似ている
- 電流が作る磁場:直線・円形・ソレノイドは覚えておく
- 磁場中の荷電粒子:ローレンツ力
今回は磁場。
「電磁気」の名の通り、物理では電気と磁気を主に勉強します。
今までは電気ばかりでしたが、ここから磁気の勉強もして、電気の知識とミックスしていきます。
電気と磁気、似ているけど全く違うもので、しっかり整理して覚えましょう!
それでは、解説していきます。
磁場の基本
まずは、磁場の基本を解説します。じっくり知識を自分のものにしていきましょう。
磁石によって作られる磁気の作用する空間である磁場(磁界)。
電気と磁気は非常によく似ていて、お互い関係しています。
コイルの中に磁石を出し入れさせて(コイルの中の磁場を変化させて)誘導電流を生じさせたように、磁場が変化すれば電場も生まれる。
ただ、電場と磁場で唯一違うのは「磁場はS極、N極単独で存在できない」という点です。
磁石をS極とN極の境目で半分にしても、またS極とN極に分かれますね。
下の表に、電場と磁場の相関についてまとめました。
電場 | 磁場 |
---|---|
電荷(正電荷・負電荷) | 磁極(N極・S極) |
電荷は単独で存在可 | 磁極は単独で存在不可 |
電気量(電気の大きさ)[C] | 磁気量(磁石の強さ)[Wb] |
F = qE F:静電気力[N] q:電荷[C] E:電場の強さ[N/C] | F = mH F:磁気力[N] m:磁極[Wb] H:磁場の強さ[N/Wb] |
電気力線の性質 ・正電荷から出て負電荷に入る ・折れ曲り、枝分かれ、交差はしない | 磁力線の性質 ・N極から出てS極に入る ・折れ曲り、枝分かれ、交差はしない |
本当に、違いは電荷が単独で存在できるかのみと考えてくれて構いません。
電流と磁場の関係
続いて、電流と磁場の関係を見ていきます。この辺りをしっかり勉強することで、電気と磁気の知識をうまくミックスできます。
- 電流が作る磁場
- 電流が磁場から受ける力
電流が作る磁場
まずは、3種類の電流の周りにどんな磁場ができるか紹介します。

直線・円形・ソレノイド(導線を円状に巻いたもの)の3種を覚えておきましょう。
電流が磁場から受ける力
続いて、電流が磁場から受ける力を考えていきます。
中学でも少しやりましたが、その時はフレミング左手の法則を使って力の向きを調べるだけでした。
高校では、その力の大きさも調べていきます。

電流が磁場から受ける力は上のように表すことができます。
ポイントは、磁場を成分で分けて、電流と垂直な成分を持ちいるところです(式でいうとsinθ)。
透磁率μは磁化しやすさを表す定数で、物体によって値が決まっています。つまり、電場でいう所の誘電率のこと。
磁束密度
電流が磁場から受ける力Fを再び見ていきます。
下のように、Fに使われる成分のμとHはともに電流周りによるもの。
- μ:透磁率(電流周りの物質による)
- H:電流周りの磁場の強さ
つまり、一つにまとめると簡略化できるってことです。
そこで導入されたのが、下のような「磁束密度」という考え方。
B = μH
B:磁束密度 [Wb(ウェーバー)/m2]または [T(テスラ)]
磁束密度の概念は「周囲の物質の影響も考慮した磁場の強さ」と言えますね。
磁束密度を考えれば、
F = IBL
より簡潔に表すことができます。
と、ここで「磁束」という概念が突然出てきました。もちろん、解説します。
磁束とは”磁束密度”に”垂直な面積”をかけたもので、下のように表せます。
Φ=BS
- Φ:磁束 [Wb]
- B:磁束密度 [Wb/m2]
- S:垂直な面積 [m2]
磁束密度と磁束、分かりにくいですね。下のように覚えておきましょう
- 磁束密度:磁束の単位面積あたりの密度
- 磁束:ある領域を貫く磁束線の本数
磁束線とは、磁場Hを図で表すときに使用した磁力線のように、磁束密度Bを図で表す時に使う概念のことです。
磁場中の荷電粒子(ローレンツ力)
今までは磁場中の電流をやりましたが、今度は電流ではなくて荷電粒子を見ていきます。
今までを理解していれば、難しくありません。勉強していきましょう!
ローレンツ力
ローレンツ力という仰々しい名前が出てきましたが、簡単です。
荷電粒子が磁場中を運動する時に、磁場から受ける力のこと。
詳しくは図で説明します。

ローレンツ力の方向は運動の向きに常に垂直なので、荷電粒子はローレンツ力を向心力とする等速円運動をしますね。
万有引力で引っ張られながら地球の周りを回る月と同じ。
そして、運動ってことなので、運動方程式(ma = F)も考えてみます。
中心方向の加速度をaとすると、運動方程式はma = qvB
円運動なので、a = v2 / rが成り立つので、磁場中の荷電粒子の運動方程式は
mv2 / r = qvB ①
と表せます。
次の円運動の周期Tも見てみます。
円運動の周期は
T = 2πr / v ②
なので、①と②を連立させると
T = 2πm / qB
となります。
ここで面白いのが、周期Tは円運動の半径とは関係ないことです。
半径がわからないのに、何秒で1周するかは分かる。
大きい円でも、小さい円でも、1周する時間は同じなのは意外ですよね。
まとめ
磁場について理解できましたか?
ポイントをまとめますね。
- 磁場の基本:電場と非常に似ている
- 電流が作る磁場:直線・円形・ソレノイドは覚えておく
- 磁場中の荷電粒子:ローレンツ力
磁場ならびに、磁場と荷電粒子を解説しました。
この辺になると本当に難しいですよね。
ローレンツ力は力学の知識も必要ですし。ただ、基本さえできれば考え方は分かるはずなので、演習をどんどん繰り返していきましょう!
さて、理解したら次に進んでいこう!
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